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動物大好き細部さんの生き方と高齢社会〈インタビュー・後半〉

2017-03-30

 

動物大好き細部さんの生き方と高齢社会(前半)〈インタビュー〉のつづき

ぽち)グレイスの職員も家族みたいですね。

細部)職員は20人いるのですが、得意分野ってあるなって本当に思います。だからそれぞれの得意分野を生かす職場にしています。大人だし、やれって言われれば、みんなそれなりにできれるけど、自分よりできる人がいるならお願いした方がいい。職員も身体介護が得意な人、生活援助が得意の人、それぞれが得意なところで仕事してもらいたいって思っています。あと、絶対どうにもできないのは「相性」。こればっかりはお客さんもつらいし、職員もつらい。お互いがつらいのにやらせてしまうと職員は辞めてしまう。辞めないで欲しいから何か気になるところはすぐに言ってもらうようにしています。

ボランティアをずっとしてくれていた斉藤憲生さんは、定年退職したらウチに来て欲しいとヘッドハンティングしました。定年退職と共にヘルパーの資格を取得し、3年の経験を経たとき、介護福祉士の資格を取得するように勧めました。「この歳で孫たちにただのじいさんでいるのと、がんばるじいさんでいるのとどっちがいいべか」って話したら、介護福祉士を一発で取得!すごいですよね。点数もとっても良かったです。あとで奥さんに聞いたら、家で人形を作って練習していたんだって。今70歳だけど、現在も正社員でがんばってくれています。85歳までは頑張って欲しい。憲生さんはなくてはならない人になりました。

中庭にある小屋は従姉妹や従姉妹の知人たちと絵を描きました。

この写真は中庭のものですが、牧場にも小屋があり、そこは職員や職員の子どもたちと一緒に絵を描いたんです。機会がありましたらぜひ見に来てください。

ぽち)めぐみの家に入居したくなってきました。家賃について教えてください。

細部)アパートの家賃は3万円で、管理費と水道光熱費を入れると(メーター計算)だいたい5万円くらい。訪問介護を全く利用しない方ももちろん入居していますので、自立して生活できる方はこのくらいですね。食費はかかると思いますが、そこは人によって異なります。介護保険料がかかる方でも全部で月に10万円くらいです。

間取りも夫婦部屋と一人部屋があります。アパートは内廊下になっているので、雨風は防げますし、私も住人なので声をかけたり、遊びに行ったりしながら過ごしています。看護師という資格があるので安心してくれているのも感じます。もちろん医療行為はしませんが、こうして見守れることも私にできる事のひとつだと思っています。

こんなこともありました。めぐみの家の建設中に、介助が必要なご本人が「今いる施設を出てここに住みたい」と言うことで弟さんから問合せをいただきました。ここで訪問介護を利用し、夜中のトイレも介助するなどお話を詰め、障害者用の車いすなども用意していたところ、弟さんから「安すぎて信用できない」と。
過去にウエディングドレスのレンタルの仕事をしていたのですが、その時もそうだったんですが、日本人は安すぎると疑うんです。3,000円でウエディングドレスは着たくない。30,000円で貸したらどんどんレンタルされていきました。

さらに弟さんに「細部さんが倒産したら、姉や老人達はどうなるんですか?」という問いをいただき、「確かにそうだ」と思いました。さまざまな考え方の方がいますので、家族である弟さんのご判断を優先されることが一番だと思い、あの日からその女性には会っていません。でもやっぱり時々、元気にしてるかな…って思い出します。

ぽち)細部さんの今まで生きてきた道が気になります。

細部)秋田市で看護師をしてましたが、途中ヨーロッパに住んで、世界を転々として、秋田に帰ってきたのは36歳の時。戻ってからは海外にウエディングドレスを仕入れに行って、レンタルするブティックをしていました。その後、看護婦の資格を生かして訪問介護事業グレイスを設立。ヘルパーさんが看護婦さんという付加価値も、1年目から仕事を頂けた大きな理由だと今は思います。

若いときに大きなバイクで大けがして、足切断の危機になったこともあったんです。私自身も身体障害者手帳を持っています。

当時、傷がふさがるのに10年かかると言われたけれど、事故から数年で国際飢餓対策機構のボランティアでタイとカンボジアの国境にある村に出掛けました。兄はやめてくれと言いましたね。兄からすると、私は3つ水たまりあると3つとも水たまりめがけて進んで行くタイプらしいです。せめて2つは避けて欲しいと願ってくれていました。今はそういうのも分かります。でも、どっちがいいのか、正しいのかっていうのは分からない。いろいろな考えがあり、生き方にも向き不向きがあると思うんです。私はコツコツ積み重ねることができないタイプだから兄からすると心配だったんでしょうね。

ぽち)アパート「めぐみの家」を現実にしようと動いたとき、お金はどのように。

細部)訪問介護事業を起業して2年ほどして、めぐみの家を建てるために銀行にお金を借りに行きました。手持ちが60円しかないほど貧乏だったので、銀行に行ってお金を借りようと、事業ビジョンをしっかりお話しました。当時まだ若い銀行員Wさんがちゃんとお話聞いてくれて「これからの時代にふさわしいから、頑張って上司にお話する」と言ってくれて。Wさんには本当に感謝しています。

めぐみの家は私自身のためでもありました。正直、私が年を取っても、朝6時には起きられないし、夜はどんちゃん騒ぎしたいし、犬もたくさん居るし、将来入居OKな老人ホームなんてないと思ったんです。自由な老人ホームはないと思ったので、そんな暮らしがかなう場所と考えたら、アパートという形態が一番良いと思ったんです。

看護学校の友達にも驚かれました。「よくお金貸してくれたね」って。そして南国風なアパートを建てようと木材を注文したときに、一難やって来ました。

融資金額と同等分の生命保険に入るのが条件だったのですが、私、C型肝炎を持っていたので「肝硬変になってガンになっていくから生命保険はどこにも入れない」って言われたんです。それでも、大好きなおばあさんたちをみとる場所を作らなければならないので、まずは自分の体を治そうと病院に通って完治したんです。でもいまだに生命保険には入れていません。

そこで銀行員のWさんがアドバイスしてくれました。「会社(法人)にお金を貸すために、細部さんが保証人になってください」と言うのです。そこで、訪問介護事業所グレイスで借金をして保証協会をたてました。でも、保証協会も訪問介護事業所がアパートが経営するなんて「前例がない」と一筋縄ではいきませんでした。私は「断られても仕方がないけれど、『前例がない』という理由で断るのだけは辞めて欲しい」と話しました。確かに素人がアパート経営なんて難しいと思いますが、この理由では納得できなかったから。

何度か保証協会とのやりとりがありましたが融資してもらえることになり、15年満期で、今頑張って借金返済中です。まだ自分の物じゃないという感覚は常にあります。でも私を信用してくれた銀行員のWさんのためにも、働く職員のためにも、ちゃんとがんばって返済していきます。

ぽち)人との出会いが大きく人生を左右すると感じます。

細部)4人のみとりたい方がいたから、めぐみの家があります。私がみとりたい方の一人、関川さんは、90歳の独身でした。私の大好きな人です。マザーテレサに似て、人のためだけに生きてきた人。自分もお金ないのにスマトラ地震があれば寄付したり、物品を送ったりするような人です。ある日、彼女が赤の他人を病院で看病している様子に立ち会いました。その時、彼女は「今は家族が見る時代ではなく、順番こに見ていく時代なんだよ。わたしのときはおめーだや」って言ったんです。「んだな」って思いました。先のことは分かりませんが、私が関川さんのこうした考えを受け継いだように、繋いでくれる方がいれば、このままここを託したいと思っています。

出会いといえば、牛島で訪問介護していたころ、めぐみの家の構想があったので、知人に「河辺にいい土地ないかな」って言ったことがありました。そしたら「今、大工さん来ているからって聞いてみたら?」って。そこから話しが膨らみ始めました。今の場所(河辺諸井)は、最初、田んぼを宅地にする予定だったのですが、それができない地域だと分かって。そしたら「田んぼだと土台がゆるいから、この家を譲ってもらえ」って言われたんです。当時、だれも住んで居なかった家があり、そこはおばあさん(Kさん)が一人住んでいたのですが、今は北海道の娘さんのところに行ったとのことでした。でも、「この家を解体して南国風アパート作りたい」と言っても、持ち主のKさんは、首を縦に振らないとも言われました。

ところが、持ち主のKおばあさんにお話したら「売る」って言ったんです。「条件は、おれどこも、そこさ住まわせてくれ」って。
それで、空港に迎えに行って「初めまして」って会って、牛島で一緒に暮らし始めました。めぐみの家ができる前だったので1年くらい牛島で暮らしました。その後、めぐみの家の完成に間に合わないと思うくらい体調が悪かったのですが、無事に引っ越して約1年半暮らして、私がみとりました。最後3日は病院で過ごしましたが、北海道の娘さんにも感謝されました。秋田に嫁いできたKおばあさん。きっとここで最期を迎えたかったのかなって。

ぽち)細部さんの夢は?

細部)今53歳、ローンもまだ残っているので、宝くじあたったら〜なんて思うときもあります。もしね、宝くじが当たったら、下宿屋として高齢者と一緒に自由に生きていたい。下宿は20人までお世話していいんだもん、当たったらやる。いろいろな補助金もあるようですが、補助もらうと制約が出てくるから。「できるだけ自由に」が私にとって大切だから。
こうしたアパート経営をするにあたっても、法律的に大丈夫か、市や県に聞きまくり、大丈夫だったからカタチにできました。常に自分が責任をとることを決めていながらも、ルールに沿って過ごして行けたらと思います。

今感じるのは、ガンの方をみとってくれる病院がないなって。ガンで治療する人は病院に通えても、末期になると最期は在宅でという流れがあります。みとる人が近くにいない、手頃な老人ホームを探して老人ホーム難民になるなど、高齢化社会の現実を身に染みている人もたくさんいます。私は、マザーテレサのように人のために生きてきた関川さんが語った言葉「今は家族が見る時代ではなく、順番こに見ていく時代なんだよ。わたしのときはおめーだや」って言葉を自分のできる範囲でやっていきたいと思います。

 

おしまい

※このめぐみの家は2008年9月にスタートして、今も入居したいと順番待ちをする高齢者がいる状態です。
※インタビュー平成28年12月

●めぐみの家とゆかいな仲間たち(Blog)
http://ameblo.jp/ronchunpandak/

●本はコチラから(電子版のみ)
ともにくらす 秋田 めぐみの家 (ニューズブック) Kindle版
書名:ともにくらす~秋田 めぐみの家~
著者:秋田魁新報社
内容紹介:
現在、高齢社会を迎え、家庭内の介護力、地域の福祉力が低下する一方で、高齢者の多くは、住み慣れた場所で自分らしく生きたいと考えています。こうした中、 最期まで自立した生活を送りたいと願う高齢者が暮らすアパートがあります。秋田市の「めぐみの家」。大家で看護師の細部さんが、めぐみの家の運営を始めた のは2008年9月。「気ままに暮らすには制約が多い高齢者向け施設は多いけれど、できるだけ干渉されたくない人向けの場所は意外にないでしょ」と語る細 部さん。「私自身が独身で自由に生きてきたから、年老いても自立して暮らせる場所がほしかった」。
細部さんは深夜や早朝、ボランティアで各部屋を 見て回るほか、一緒に外出したり、話し相手になったりして入居者を見守り続けています。そして、高齢者と共に暮らす時、その人の「死」を意識しないではい られないといいます。共暮らしの先にある「みとり」。めぐみの家では細部さんをはじめ、入居者、その家族、スタッフ、近隣の人たちが本物の家族のように暮 らしています。これは、高齢者が家族以外の若い世代に支えられながら共に暮らすというひとつの挑戦といえるでしょう。(C)2015 AKITA SAKIGAKE SHIMPO,NewsBook

この記事を書いたライター

ペット&アニマル情報局 チーム ぽちたま

ペット情報をお届けする チームぽちたま です。ペットや動物たちとのよりよい暮らしを望む仲間と、情報共有しながら、さまざまな活動をしています。時々ペット以外の秋田ネタも載せます。なぜなら秋田が大好きだからです。
♪ペットと暮らすなら、遊ぶなら、秋田県♪をキャッチコピーに、「よりよいペット&アニマルとの共生」を目指しています。

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